岸田総理が作ろうとしている新しい資本主義とは?
岸田総理が作ろうとしている新資本主義というのはどんな社会なのでしょうか?
以下は、首相官邸の新しい資本主義について書かれている文章です。
こうした取組により、新型コロナとの闘いに打ち克ったならば、
その先に目指すべきは、日本経済再生の要である、「新しい資本主義」の実現です。
市場に過度に依存し過ぎたことで生じた、格差や貧困の拡大。
自然に負荷をかけ過ぎたことで深刻化した気候変動問題。
こうした、資本主義の弊害に対応し、持続可能な経済を作り上げていく。
国家資本主義とも呼べる経済体制からの強力な挑戦に対抗し、これまで以上の力強い成長を実現させていく。
こうした問題意識は、米国・欧州など、多くの先進国共通のものです。
「新しい資本主義」においては、全てを、市場や競争に任せるのではなく、
官と民が、今後の経済社会の変革の全体像を共有しながら、共に役割を果たすことが大切です。
→https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0101nentou.html
もちろん、内閣官房のホームページで公開された新しい資本主義実現会議の資料を見ると、
『成長と分配の好循環』と『コロナ後の新しい社会の開拓』をコンセプトとした
新しい資本主義を実現していくことを会議の目的と定め、以下のような課題が列挙されています。
・コロナ禍で顕在化したデジタル対応の遅れ
・非正規・女性の困窮などの課題
・気候変動など経済社会の持続可能性の確保
・テクノロジーを巡る国際競争の激化
・中間層の伸び悩みや格差の拡大
・下請企業へのしわ寄せ
資本主義で大切なのは信用創造(預金通貨の創造)である
新しい資本主義を知る前に資本主義とは何か?を理解する必要があります。
今回紹介するのは、ジョセフ・アロイス・シュンペーターが示している資本主義の定義です。
シュンペーターによれば、資本主義とは以下の『3つの特徴を有する産業社会』を指しています。
②私的利益と私的損失責任
③民間銀行による決済手段(銀行手形あるいは預金)の創造
特に③は資本主義の定義の中でも特に重要とされています。
①と②を満たしていたとしても③が欠けているような社会は『資本主義ではない』とシュンペーターは言っています。
この民間銀行による決済手段(銀行手形あるいは預金)の創造というのは、
民間銀行による『信用創造(預金通貨の創造)のこと』です。
民間銀行というのは、貸出を行うことによって預金をゼロから創造することができ、
この機能を『信用創造』と呼びます。
シュンペーターは『信用創造という機能こそが資本主義の中核を成す』と見ているわけです。
しかし、日本は民間企業への銀行融資はこの20年以上極めて低調でした。
バブル崩壊以降、日本企業は不況時に貸し剥がしされることを恐れ、
自己資金だけで投資やコストを賄おうとしたからです。
その結果『融資(信用創造)が低迷を続けているわけ』です。
この状態をシュンペーターベースで考えるのであれば『日本の資本主義が死んでいる』と言ってもおかしくはないです。
日本において新しい資本主義を目指すためには『信用創造が活発に行われる状況』を生み出すことが重要になります。
シュンペーターは社会主義という言葉を資本主義の対義語としては使っていない
元々、日本というのは『世界で最も成功した社会主義国家である』と言われています。
シュンペーターの言う社会主義とは『生産過程の運営を何らかの公的機関に委ねる制度のこと』です。
実はシュンペーターは社会主義という言葉を『資本主義の対義語としては使っていない』のです。
シュンペーター曰く、世界には純粋な資本主義も社会主義も無く、
どの国もグラデーションのように差はあれど、公的な経済運営や公的な経済計画といったものを含んでいます。
そのため、現実に存在する経済システムというは『資本主義か社会主義』かという両極端な話ではなく、
『すべて純粋な資本主義と純粋な社会主義の間』のいずれかの状態にあるものということです。
新しい資本主義で頑張らない人が得をする社会になる可能性もある
新しい資本主義は『頑張らない人が得をする社会』に繋がる可能性もあります。
大学生などの学生さんにもわかりやすく説明すると、
新しい資本主義はテストで満点取っている人から点数を奪って、赤点の生徒にその点数を与えるという社会です。
すると、真面目に勉強して満点を取っている生徒が不満に思います。
勉強しても点数が引かれるので勉強のモチベーションが無くなり、
満点を取る努力をしなくなり、徐々に生徒は点数を取らなくなります。
そして満点の生徒から80点の生徒そして平均点の生徒へとダウングレードしていきます。
この新しい資本主義は最終的には、
赤点の生徒から点数を取り0点の何もしない生徒に点数を与えるような社会になるわけです。
岸田総理は、
・自社株買い規制発言
によって『株価急落を招く』などが起こりました。
当然、金融所得課税を強化すれば、富裕層や起業家が海外に逃げてしまいます。
残った国民がみな貧しくなっていく気がしてならず、そんな国の株に投資したくないからです。
そうした、能力の不平等を許さない社会は誰も頑張ろうとはしません。
というように新しい資本主義の舵を切り方を間違えるとこうした未来になってしまうのです。
日本が目指すべき新しい資本主義はプラスなインセンティブが働く社会
日本では満点取る生徒に対して妬みや僻みなどが多いため、
政府もそうした不満を解決するために『マイナスなインセンティブ』を与えています。
しかし、本来目指すべきは『プラスなインセンティブ』だと思います。
プラスなインセンティブ:頑張ると得をする社会
頑張らない人は今の現状は赤点だったとしても上がることはないので、最終的には0点になるわけであり、
そうした人たちを大量に作り出して支える社会は崩壊すると思います。
むしろ赤点の生徒を平均点の生徒にすることや満点の生徒にするなどの
底上げするための環境を作り出すことのほうが重要なんですね。
例えば、スタートアップ支援を新しい資本主義の重点項目としていますが、これはとてもよい施策だと思います。
チャレンジ精神と共に『失敗しても底にはセーフティネットがある』という心理的安全性は重要です。
厚生労働省は会社を辞めて起業した場合、失業手当を受給する権利を最大3年間保留できるようにする。
現在の受給可能期間は離職後1年間だけで、その間に起業すると全額を受け取れない課題があった。
終身雇用の慣行に沿った制度を一部見直すことで安全網を広げて起業などの多様な働き方を後押しする。
経済を活性化するスタートアップが生まれやすい環境を整える。
→https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA235DA0T21C21A2000000/
新しい資本主義が頑張ると得をする社会であってほしいと思います。
新しい資本主義を抜け出す方法
新しい資本主義には両面性がありますが、仮にマイナスなインセンティブばかりになってしまえば、
必死で上を目指して努力している人にとっては残酷な社会だと思います。
そうした頑張る人たちが新しい資本主義を抜け出す方法についてご紹介します。
国を変えて移住する
100点を取る人たちにとって新しい資本主義ほど『馬鹿げた国はない』と思っています。
そのため、100点を取る人たちがそのまま結果が反映される国へ移住するというのも良い方法です。
おそらく、これは今の20代や30代の人たちがそうしたことをすでに計画している人が多いと思います。
弱者のフリをする
新しい資本主義はできる人からできない人に与えられるため、
『弱者のフリをする』というのは非常に戦略的には正しいです。
これは今よりももっと弱者になれということではないです。あくまでフリです。
例えば、日本の場合は年収が高くなるにつれて社会保険料などが多く取られますが、
年収を上げずに一番特をする年収にキープするというのも良い方法です。
他にも弱者を優遇する制度などを利用していくのも良いでしょう。
外資系より財閥系に勤める
外資系より財閥系に勤めるというのは新しい資本主義で重要です。
というのも集めた生徒のテストの点を誰にばら撒くかを決めるのは先生(政府)なので、
政府の近いお友達(財閥系企業)のほうが点をばら撒いてくれる可能性が高いです。
まとめ
新しい資本主義はマイナスなインセンティブが働き
『等しく平等に貧しくなろう』という社会になってもおかしくはない状態です。
それは、日本の国民性としては正しいのかもしれないですが。
ただ、新しい資本主義によってプラスなインセンティブが生まれて、
資本主義で大切なのは信用創造(預金通貨の創造)が回るような社会になれば日本の未来は明るくなると思います。
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